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●第15回 九州厚生局と保団連九州ブロックの懇談会
2024年2月1日(木)第15回九州厚生局との懇談会・質疑応答まとめ
<事前質問>
1.YouTube等の動画サイトを用いた保険診療等の要点解説動画について
【九州ブロック】
東北厚生局が公式 YouTube で医科歯科別に保険診療や個別指導等の要点を動画で解説しています。ポイントが非常に分かりやすくまとまっています。九州厚生局では同様の動画を製作される予定はありませんか。
新規開業医のみならず、ベテランやその他の医療スタッフにとって、保険診療や個別指導等に対する理解をより一層深めるきっかけにもなり、適正な保険診療の推進にも資するのではないでしょうか。
【厚生局】
現在のところ、九州厚生局独自で動画を製作する予定はありませんが、指導用の資料等に関しましては厚生労働省のホームページに掲載しており、どなたでも閲覧可能ですので、そちらをご覧いただきたいと考えます。
2.サイバーセキュリティ対策への指導について
【九州ブロック】
個別指導の事前提出書類の中の「医療情報システムの概況等」という様式に「医療機関におけるサイバーセキュリティ対策状況のチェック」という欄が新たに設けられました。
個別指導の現場では、対策を講じていない医療機関に対してはどのような指導をされているのか具体的にお聞かせください。また、既に対策を講じている医療機関に対しても、対策が不十分な場合等にどのような指導がされているか具体例をお聞かせください。
【厚生局】
診療所は専門職員の配置が少なく、対応が困難なことは承知しています。例えば、電子カルテを導入している医療機関でサイバーセキュリティ対策が講じられていない場合や対策への理解が不十分な場合は個別指導において指導します。主に、自己防衛を意識的に行っているかという観点からチェックしています。
【九州ブロック】
各医療機関も、苦手なところを一つ一つ整備していきますので、懇切丁寧な対応をしていただければと思います。
【厚生局】
細かい点を指摘・追求することが目的ではありません。ベンダー等と協力し体制を構築しているのか等が重要であると考えます。
3.健康保険証の廃止について
【九州ブロック】
2023年8月4日、政府は、2024年秋に現行の健康保険証を廃止してマイナンバーカードと一体化する方針の一部見直しを表明しましたが、それだけではマイナ保険証による医療現場での深刻なトラブルは解決しません。「いつでも」「どこでも」「だれでも」必要があれば医療にかかることができる「国民皆保険」を守るため、現行の保険証の存続を強く求めます。
保険証の廃止の方針が国民と医療現場を混乱させている現状をどうお考えでしょうか。また、現場でのトラブルを貴局で調査される予定がありますか。
【厚生局】
昨年の12月22日に現行の健康保険証を廃止することを閣議決定したところです。また、現行の健康保険証は廃止後も最長1年間は使えるほか、マイナンバーカードを取得していない人や保険証として登録していない方については、保険証の代わりとなる資格確認書が発行されます。当局において独自に現場のトラブルに関して何らかの調査等を行う予定はありません。
4.開設者や管理者が病気等で指導に出席できない場合の取扱いについて
【九州ブロック】
開設者および管理者が病気等で指導に出席できない場合はどのように取り扱われていますか。出席できない場合、医療機関はどのような手続きをすればよいのでしょうか。集団指導、集団的個別指導、個別指導、共同指導、それぞれで取扱いが異なるのであれば、指導ごとにご教示ください。
【厚生局】
集団指導、集団的個別指導、個別指導、共同指導はそれぞれ考え方が異なります。
集団指導は現在、基本的にeラーニングにより実施していますので、対象者に関しては、指導内容を1カ月以内に視聴いただく形です。視聴期間終了後に、視聴記録がない場合は、直接連絡して確認したり、次回の集団指導のeラーニングの際にあらためて案内するなど指導の機会確保に努めています。
集団的個別指導、個別指導、共同指導は、病気等で出席できない場合など、正当な理由に該当する場合には、指導を受ける側の方から出席できない理由書と、その事実が証明できるようなもの、例えば病気であれば診断書の提出を求めています。
指導日程延期の可否は、病気・海外渡航・親族の冠婚葬祭などの指導大綱に示されている例を基準に判断しています。手術や自治体検診等、様々なケースが想定されますが、原則、県事務所で独自に判断することはありません。
会場や学識経験者の立会の確保の観点からも、医療機関に予定どおりご対応いただけるようご協力を求めています。
【九州ブロック】
健診事業は正当な理由に含まれるのでしょうか。昨年、近畿厚生局と保団連近畿ブロックが懇談した際に、「健診事業も含まれる」と確認されました。以前、貴局と九州ブロックが懇談した際にも、「個別指導当日に公的な検診などが予定されている場合は、個別指導の日程変更が認められる場合がある」との回答がありました。
また、30日の処方制限がある向精神薬を患者の状態により4週間隔で処方する医療機関では、指導通知が1カ月前では次の受診及び投薬の調整が難しいのが現状です。指導日の予約患者の日程変更は、精神科特有の問題もあって、予約を取り直せない場合もあります。
他にも抗精神病薬の持効性注射剤(LAI)を注射している患者は必ず4週間隔での注射が必要です。この注射の前倒しは血中濃度が崩れる理由もあって施術の2日前までしかできません。後ろにずらす場合は、薬の効果が切れてしまうため、内服薬を処方しなくてはなりませんが、LAI 投与の患者は内服が正しくできない人もいます。個別指導によって、予定していた治療ができずに増悪させてしまうのは不本意です。
上記のような医学的理由がある場合、指導日程の変更は可能でしょうか。
【厚生局】
指導日程延期の可否は、指導大綱に示されている例を基準に判断しています。可能な限り日程調整を行っていただき、場合によっては代診がお願いできないかなど確認を行っています。個別の事情について、県事務所で判断することはありません。近畿厚生局の回答の趣旨が分かりませんので、この場での回答は控えさせていただきます。以前懇談した際に回答した、検診の際の日程変更については持ち帰って確認します。
<編注:検診の日程変更について>
行政側から依頼された公的な検診については、担当医の交代が可能か否かを各県事務所から照会します。変更が困難であることが確認できれば正当な理由として認める取り扱いとします。
5.他院製作の補綴物を装着する際のクラウン・ブリッジ維持管理料の算定について
【九州ブロック】
義歯を製作した医療機関が、印象後に廃院したため製作されていた義歯を自院で装着した事例がありました。事前に県事務所とも連絡をとった上で対応し、①前医からの情報提供書があること、②前医は未装着請求をすること、③後医は補綴物本体の請求はせずに装着料のみを算定すること、④その旨を後医は摘要欄に記載すること、となっていて全体として合理的な仕組みであると思われます。
県事務所の説明によると、同様のケースがあれば今後も算定を認めるとのことで、この算定方法がルール化されたのはよいことでした。
今回の事例は義歯でしたが、会員が「クラウン、ブリッジ等の場合は」と質問したところ、「インレーは認められませんが、クラウン、ブリッジは認めます」という回答でした。ただし、クラウン・ブリッジ維持管理料の算定については回答が曖昧であったとのことでした。
設計から製作までの過程に携わっていないのに、装着を任されただけで2年間の維持管理の責任を負わされるのは責任が過大だと思われますので、「装着は可能だが、クラウン・ ブリッジ維持管理料の算定はしない」という取扱いをルール化してほしいと思いますが、いかがでしょうか。
【厚生局】
廃止等を行う前医と診療継続を受けた後医との間で合意の上で歯科医学的に適切な診療継続が可能な場合には、前医は未装着請求し、後医に情報提供することになります。後医は装着量及びクラウン・ブリッジ維持管理料を算定することは差し支えない取り扱いとしています。点数表ではクラウン・ブリッジ維持管理料を算定する患者、しない患者の選択はできない規定となっています。
【九州ブロック】
他院作成の補綴物の装着は、あくまでも社保における取り扱いであるため、社保・国保で差異のない取り扱いとすることを検討してください。
【厚生局】
本件は点数表等に記載されないレアなケースであり、レセプトの摘要欄に前医から装着の依頼を受けたことがわかるように記載するなどの対応をお願いします。
なお、社保・国保の差異は、本省及び審査支払機関において、審査格差の解消を進めていると承知しています。
<要望事項>
1.新規個別指導における結果通知の早期発出について
【九州ブロック】
令和4年度の医科新規個別指導における結果通知の発出について、熊本県では、新規個別指導実施日から結果通知発出日までの期間が2カ月を超えるケースが、全体の約半数に上っています。
新規個別指導は、新規指定より概ね6カ月を経過した保険医療機関に対して、教育的効果を目的として、通常の個別指導とは別枠で実施されているものです。
やむを得ないケースもあるとは思いますが、それ以外の場合は可能な限り早期に発出していただきますよう、お願いいたします。
【厚生局】
指導結果通知については、当局もできるだけ1カ月以内、遅くとも2カ月以内に通知するよう各県事務所に指導しています。今後とも早期発出に向け事務所等を指導していきたいと考えております。
【九州ブロック】
指導結果通知が遅延すれば保険医の不安も増し萎縮診療になりかねないため、改善をお願いします。
2.個別指導における全ての対象患者名(30人分)を早期に通知することについて
【九州ブロック】
指導前日に通知される10人分のカルテ等の準備は医療機関に多大な負担を課すものです。指導前日の医療機関の負担軽減のためにも、全ての対象患者名(30人分)を早期に通知することを改めて要望いたします。また本省への働きかけについてもお願いいたします。
【厚生局】
平成28年度から取扱が変更されています。平成27年度までは、実施通知自体は3週間前に発出して、対象患者は30人のうちの4日前に15人、前日に15人としていましたが、28年度から前日に10人、1週間前に20人へと変更し、保険医の負担軽減に努めてきました。この間も同様の要望をいただいており、本省に要望を伝えています。
厚生労働省の医療指導監査室は、「当面はこの運用で進めたいが、今後も個別指導の効果的かつ効率的な運用のために、引き続き必要な検討を行う」と見解を示しています。
【九州ブロック】
電子カルテを導入する医療機関が増加していますが、紙で印刷して持参しなければならないのでしょうか。
【厚生局】
印刷したものを持参していただくか、指導会場において電子カルテが単独で運用できるのであれば、そちらで対応していただいても構いません。
3.個別指導の実施通知において、選定理由を明記することについて
【九州ブロック】
個別指導の実施通知に選定理由を明記してください。
もし、実施通知への記載が困難なのであれば、指導当日、指導の場において、指導を受ける保険医に選定理由をお教えくださるようお願いいたします。
併せて、選定理由を非開示とする規定等がございましたらお教えください。
【厚生局】
個別指導の実施通知に関しては、基本的に選定理由を記載する取扱いにはなっていません。個別指導に選定する理由は指導大綱で定められていますので、例えば情報提供や、指導結果が再指導のもの、正当な理由なく集団的個別指導を欠席した者、等が定められています。
なぜ選定理由を教示・開示しないかは、明文化されていませんが、例えば情報提供による選定の場合、選定理由を教示(開示)することによって情報提供者が特定され不利益を被る可能性自体が否定できないことから、教示(開示)しない取り扱いを行っているところです。
4.医療機関向けの個別指導等に関する講習会について
【九州ブロック】
個別指導や新規個別指導での指摘事項は多岐にわたり、時には多額の自主返還につながって医療機関にとっての大きな損失につながることもあります。そういった事例を未然に防ぐためにも、医療機関向けの個別指導等に関する講習会を行っていただけないでしょうか。
【厚生局】
九州厚生局独自で講習会を開催することは予定していません。
新規指定時や更新時に関しては、現在はeラーニング形式の集団指導、高点数に該当する保険医療機関については、集合形式により集団的個別指導を実施します。指導大綱など、厚生労働省本省の方針に則って保険診療のルールについて理解を深めていただくために当局も指導を実施しています。その中では、個別指導等で誤りが散見される事項は説明を行い、算定誤りがなくなるように努めています。
5.指導日程表での集団指導の記載について
【九州ブロック】
令和5年度に開示された指導日程表を見ますと、集団指導の記載がある県とない県がありますが、集団指導の日程を記載しない理由が何かあるのでしょうか。次年度以降は九州厚生局管内の全県で集団指導の指導日程を記載していただけないでしょうか。
【厚生局】
令和5年度の集団指導はeラーニング形式であり、事務所によっては指導会場を確保せず、1カ月間の視聴期間の間に視聴をお願いしていたため、指導日程表に入れていませんでした。一方、九州厚生局管内で記載方法が統一されていなかったため、今後は統一する方向で検討したいと考えています。
6.高点数による個別指導について
【九州ブロック】
「集団的個別指導の対象になった。発熱外来で患者が多かったことが理由ではないか」「今年、集団的個別指導に選定されたので、県事務所に照会したところ、発熱外来(診療・検査医療機関)届出以降の平均点数が500点弱高くなっていた。感染症対策に協力した結果、 集団的個別指導、そして個別指導に選定されるとなると納得できない」という声が多数寄せられています。また、大阪府保険医協会調査では、発熱外来医療機関以外で指導になったのはわずか2%だったのに対して、発熱外来医療機関は21%と割合ベースで大きな開きがありました。これは平均点数算出方法の不合理と言わざるをえません。
いわゆる高点数医療機関の今後の取扱いですが、令和5年度の集団的個別指導に選定された医療機関は、翌年度の令和6年度も高点数であれば、翌々年度の令和7年度に個別指導に選定されるという理解でよいのでしょうか。
【厚生局】
令和5年度の集団的個別指導に選定された医療機関については、令和5年1月19日付の事務連絡で、令和5年度に集団的個別指導を受けた保険医療機関等について、指導大綱等に規定する選定基準に該当する場合は、令和7年度に高点数を理由とする個別指導の対象とするか、令和6年度の状況を見極めた上で実施の可否を判断することになっています。
令和6年度の個別指導については、コロナの影響を一定以上受け、高点数となった医療機関は除外すべきとの考え方に基づき、令和6年1月26日付で「令和6年度指導・監査等について」の事務連絡が出されました。本来、令和6年度の個別指導では、令和4年度の集団的個別指導に該当し、令和5年度にも概ね上位4%程度にあたる高点数であれば、個別指導に選定されます。今回は追加の条件として、前述の取り扱いによって選定された医療機関のうち、平成30年度にも高点数だったため、令和元年度の集団的個別指導に選定されており、令和3年度に本来は個別指導の選定対象だった医療機関に対して実施することとされています。つまり、令和3年度に個別指導の対象として選定されており、かつ、令和6年度も個別指導の対象として選定される医療機関が、令和6年度の指導対象となります。コロナ禍前後ともに高点数であるという要件を満たす医療機関が選定されるため、コロナによる点数への影響を除外できると考えています。
ただ、この措置は令和6年度の特別なものであり、ご質問の令和7年度については今年度の状況を見極めたうえで、今後示されると思います。
【九州ブロック】
令和7年度は6年度の状況を見た上でということですが、本省、九州厚生局、地方事務所等、どのレベルで見るのですか。
【厚生局】
全国的に同じ公平なルールで実施するため、令和6年度の全国の状況を厚生労働省で見極めた上で、事務連絡が出ると考えております。
福岡県歯科保険医協会
- ・ふくおか女性歯科医師の会
- ・ふくおか子どもの医療を守る会