福岡県歯科保険医協会タイトル
福岡県社会保障推進協議会第27回定期総会アピール
 
コロナ禍のいまこそ
人権保障、憲法の理念が活かされる政治の実現を
 
 

 コロナ禍から1年が経過し、様ざまな社会保障の問題がクローズアップされた1年でした。
 昨年末には厚労省のホームページに「生活保護受給は権利だ」と謳うようになり、扶養調査も不十分ながら一定制限するとした対応が生まれ、まさに社会保障を巡るせめぎあいの闘いが全国で、県民各層で続けられています。
 昨年9月までの7年8カ月に及ぶ安倍政権は、①富の集中をはかった「アベノミクス」、②消費税増税と社会保障改悪などの国民生活切り捨て、③「森友・加計問題」など政治の私物化、④「特定秘密保護法」の強行採決、集団的自衛権の行使容認などにより、民主主義。平和主義。立憲主義を後退させ続け「悪夢」としか言いようのない年月でした。
 コロナ禍を理由とした10万人を超える解雇・雇い止め、中小零細事業者を中心とする倒産への懸念、医療をはじめ、介護、福祉現場のひっ迫、住民のいのちと健康を守る保健所まで機能不全、自殺者も2万人を超える等、11年ぶりに増加しています。特に女性の自殺者が増えています。
 感染拡大で、充分な検査も受けられず、陽性となっても入院もできず自宅待機を余儀なくされ、自宅で亡くなるケースも発生しました。福岡県民主医療機関連合会が、29の病院や診療所などに実施した調査では、コロナ禍の生活困窮によって医療費が払えないとの相談をした患者さんは24人にのぼりました。8割は30代から60代の働き盛りで、コロナ禍で無職になった人が大半を占めていました。これは氷山の一角です。
 「新型コロナ感染症」の収束が見通せない中、日々の営みに深刻な影響が広がっています。
 「自助・共助」が押し付けられ、政権与党の暴走で社会が傷んできています。
 生活と経営、日々の営みが壊され、権利がヘし折られる事態にまでなりつつあります。
 「新型コロナウイルス感染」禍での経験は、私たちの生活、生命、医療、介護が政治と強くつながっていることを浮き彫りにしました。
 今年は総選挙の年です。
 国民のいのちと暮らしを危機にさらすコロナ対策の現政権の流れを続けさせるのか、それを断ち切ってあらゆる資源を投入してコロナ対策、生活補償を最優先する新たな政権を誕生させるのかが問われています。
 後期高齢者医療窓口負担2倍化にストップをかける闘いなど、今まさに、政治に求められるのは、県民の命と暮らしを最優先課題に、医療・公衆衛生をはじめとする社会保障の抜本的拡充です。
 入管法改定案が、国民世論の力でついに廃案となりましたが、与党勢力絶対多数の下で、国会は問答無用の悪法製造機と化しており、「コロナ」対策に隠れて、75歳以上の窓口負担2倍化、紹介状なしの病院受診の定額負担の拡大、介護では総合事業への地ならし、介護サービス自己負担額原則2割への改悪も引き続き狙われています。
 地域医療構想の名のもとの統廃合、絶対数が足りない中での「医師の働き方改革」、看護師不足、介護職の慢性的な不足など、制度崩壊、生活崩壊の危機に直面しています。
 平和を守り、人権を尊重し、社会保障を充実させるため、「国民が安心して暮らせる国づくり」、「ストップ!患者負担増」の世論を広げ、安心。安全の医療。介護や平和を脅かす政治。外交姿勢を転換させることが必要です。主人公は国民です。
 日本国憲法第25条の理念が活かされる政治実現のため、私たちは、広く国民の皆さんとともに、今後とも奮闘する決意です。

2021年6月8日
福岡県社会保障推進協議会第27回定期総会
厚生労働大臣 田村 憲久 殿
 
歯科医師による予防接種行為の適法性確保について
行政解釈ではなく法律の制定により行うことを求める
 
福岡県歯科保険医協会
2021年4月22日理事会

1.はじめに
 報道によれば、政府は新型コロナウイルスのワクチン接種について、歯科医師が注射を打てるようにする方向で調整に入ったとされ、厚生労働省が近く有識者懇談会を開き、歯科医師による接種を特例として認める案を示すとされている。
 これは、歯科医師は歯科医師法第17条により歯科医業のみ行うこととされているため、医師法第17条に規定される医業に該当する予防接種を歯科医師が行う場合には、医業を医師のみが行うこととしている医師法に抵触することに起因する。
 今回の問題について、医師・歯科医師の資格を定める医師法および歯科医師法の所管官庁である厚生労働省が、歯科医師による予防接種行為の法律適合性について検討することは、当然のことであろう。
2.歯科医師による検体採取について厚生労働省が昨年示した行政解釈について
 昨年4月27日、厚生労働省は、令和2年4月26日に開催された医道審議会医師分科会及び歯科医師分科会合同による 「PCR検査に係る人材に関する懇談会」での検討の結果を踏まえ、新型コロナウイルス感染症の診断を目的としたPCR検査のための鼻腔・咽頭拭い液の採取の歯科医師による実施の可否についての法的な整理について、「新型コロナウイルス感染症に関するPCR検査のための鼻腔・咽頭拭い液の採取の歯科医師による実施について」(令和2年4月27日厚生労働省医政局医事課、歯科保健課事務連絡、以下「4月27日事務連絡」という。)を発出し、一定の条件下での歯科医師による検体採取を行政解釈として認めた。
3.行政解釈ではなく法律の制定により適法性を確保することを求める
 今回も、この4月27日事務連絡と同様に、行政庁による法解釈を示して歯科医師による予防接種行為につき適法性を担保するという方法をとることが予想されるが、4月27日事務連絡も含めて、著しく不適切な方法であると言わざるを得ない。
 なぜなら、今回問題となる歯科医師による予防接種行為の医師法との関係は、刑罰と関連する事項であるためである。刑罰に関わる事項は、現代国家において当然の原則である罪刑法定主義に基づき、法律により定めることが必要不可欠であり、緊急事態の現下においても、揺るがすことのできない原則である。
 上述の通り、今回の歯科医師による予防接種行為は、それが緊急避難的な特例であるとしても、刑罰と関連する行為であるから、罪刑法定主義の原則に従い、法律をもって歯科医師による予防接種行為の適法性を定め、刑罰の対象とならないことを明示することが必要不可欠である。
 厚生労働省は、歯科医師による予防接種行為が医師法違反の違法性を阻却できるかという点について行政としての解釈を示すと予想される。しかし、それは裁判所であくまで一判断要素とされるに過ぎない。
 すなわち、行為の適法性が法律上明定されている場合と比較して、法的安定性に著しい差異があり、明示的に適法性が法定されていない行為については、刑事責任に問われるリスクを負うことになる。
 厚生労働省は、市立札幌病院における歯科医師の医科研修事件で歯科医師の業務範囲についてまったく異なる行政解釈を示し、混乱をもたらした歴史を踏まえなければならない。
4.歯科医師としての使命を果たすために
 人類的課題である新型コロナウイルスの感染拡大に対抗する、現時点で唯一の積極的対策であるワクチン接種をはじめとした今般のコロナウイルス対策に関して、歯科医師法第1条において公衆衛生の向上及び増進に寄与することが法定されている歯科医師が必要に応じて協力することは、当協会としても当然のことであると考える。
5.結論および要望
 当協会は、歯科医師による予防接種行為について、政府・厚生労働省に対し、行政解釈ではなく、国会の議論を通じてその適法性を確保する法律を整備することを強く求める。

以上
2021年1月28日

厚生労働大臣 田村 憲久 殿

福岡県歯科保険医協会
会 長 大崎 公司
 
逆ザヤを強要する「金パラ」改定制度
抜本的な制度改善を求める
 

 中医協総会は1月27日、歯科用貴金属について「随時改定Ⅰ」実施を確認した。4月以降、金パラ1gの告示価格は2,668円となり、現行の2,450円から218円(8.9%)の引き上げとなる。
 ここ数年の異常な歯科用貴金属の「金パラ」価格高騰に関して、当協会を始め全国の保険医協会・医会・全国保険医団体連合会(保団連)では、歯科医師・歯科医療機関と共に実勢価格と保険償還価格との間に生じる著しい「逆ザヤ」の解消を求める運動を進めてきた。これらの運動により、厚労省は昨年、歯科用貴金属の価格改定について「随時改定Ⅱ」を導入した。
 ところが、2020年は4月の基準材料価格改定、7月の「随時改定Ⅱ」、10月の「随時改定Ⅰ」と1年間で3回の価格改定が行われたにも関わらず、実勢価格と告示価格の乖離が解消されたのは「随時改定Ⅱ」が実施された7月からのごく短期間に限られ、大部分の期間が「逆ザヤ」となっていたのが実態である。
 以下に示す通り、歯科用貴金属の価格改定には根本的な問題が残されたままである。
 第1に、告示価格改定は一定期間の素材価格の平均値に基づいて行われており、今回初めてこの値が明示されたが、この値は歯科医療機関の購入価格である実勢価格を反映するものではない。すなわち、歯科医療機関は製品としての合金を購入しているのであり、合金を組成する金属の素材価格とそれを加工した合金の製品価格である実勢価格とが乖離するのは自明の理である。
 また、厚労省は本来告示価格の改定根拠とすべき市場実勢価格のデータである特定保険医療材料価格調査を行っているにもかかわらずそれを非公開としており、告示価格決定プロセスの不透明さは到底納得できるものではない。
 歯科医療機関に合金を納入している業者は調査が困難なほど多数に上るものではなく、厚労省は実勢価格の変化を把握し、これを告示価格改定の根拠とすべきである。
 第2に、改定施行時の実勢価格と、素材価格を参照する期間とのタイムラグが不可避である上、実態との乖離が拡大するルールとなっている。
 今回参照されたのは2020年12月までの平均値であるが、実際の施行は4月であり、この3カ月のタイムラグが常に発生する仕組みとされている。
 さらに、随時改定ⅠとⅡは要件が異なるため、要件の厳しい随時改定Ⅱが見送られた今回の場合、試算価格算出に用いられる前回改定からの平均価格の参照期間はより長くなり、実態との乖離はより拡大することとなる。
 1点目にも示す通り、厚労省は実勢価格の調査を行い、告示施行直近のデータを告示価格に反映すべきである。
 全国の保険医協会・医会・保団連では、歯科医療機関の経営を圧迫し続けている金パラの実勢価格と保険償還価格の乖離をなくす抜本的な制度の確立の必要性を指摘してきた。
 当協会は、地域医療の担い手である歯科医療機関を維持する責任を負う政府・厚生労働省が、金パラの市場実勢価格を適時に調査・把握し、実態に即した告示価格を設定するための抜本的な制度改善を実施することを強く求めるものである。
 

以上
新型コロナ感染拡大防止に必要なのは「罰則」ではない!
「社会保障」「公衆衛生」そして「口腔ケア」だ!
 
2021年1月26日
福岡県歯科保険医協会 感染対策委員会
 

 
 政府は、1月22日、通常国会に提出する新型コロナウイルス感染症対策の特別措置法および感染症法の改正案を閣議決定した。改正案には、勧告に基づく入院措置に従わない感染者に対する刑事罰や、営業時間短縮命令などに従わない事業者への過料の導入が明記されている。
 この改正案に対して、日本医学会連合、日本公衆衛生学会、日本疫学会、患者の権利法をつくる会、全国保険医団体連合会、東京保険医協会など多くの団体が抗議の声明を発出されている。私たち福岡県歯科保険医協会は、こうした各団体の声明に全面的に賛同し、心からの連帯を表明する。
 患者・国民の皆さんには、今回の法律改正の危険性をぜひ、「自分のこと」として捉えていただくようお願いしたい。今回の改正案は感染拡大を防止するのではなく、罰則を恐れて検査拒否が広がることにより、ますます感染を拡大させ、日本国憲法が保障する「個人の尊厳」や、感染症法の「我が国においては、過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群(注.エイズ)等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である」という歴史への反省に込められた「法の精神」を根本的に破壊するという恐るべき事態をもたらすものである。
 当協会は各声明の論点と合わせ、以下の理由で、今回の法改正による罰則の導入に反対する。

①病気になったとき、ある治療を受けるかどうかを自分で決定する患者さんの自己決定権は、日本国憲法13条「個人の尊厳」により保障される重要な基本的人権のひとつである。「感染拡大防止」を名目に、自己決定権を無視した罰則を背景とする措置の強制が横行すれば、患者さんひとりひとりの意思を無視した入院や検査、ワクチン接種などの強制につながるおそれがある。 

②勧告に基づく入院措置に従わない場合に「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」、感染に関わる情報提供を拒否した場合に「50万円以下の罰金」などの刑事罰を科すとしているが、入院や疫学調査による感染拡大防止という公衆衛生の目的と何ら関連性を有しない手段であり、感染者を「犯罪者」扱いする究極の暴政である。

③緊急事態宣言下で都道府県知事の営業時短・休業命令に従わない事業者に「50万円以下の過料」を科すとしているが、感染拡大防止のための休業要請を実効的なものとするために第一に必要なのは、十分な損失補償である。コロナ禍の長期化と収入減にあえぐ事業者の休業による損失は、もはや受忍限度をはるかに超えている。私たち医療関係者にとって、飲食店をはじめ事業者の方々は、共に地域社会をつくる大切な仲間だ。事業者・従業員の方々の暮らしと命、地域経済を支えるため、徹底補償を求める。

 新型コロナ感染拡大防止に必要なのは「罰則」ではない。今すぐ必要なのは、国民全体への手厚い経済的支援、消費税の凍結・減税・廃止、感染症病床を含む病床削減や公立・公的病院統廃合などの計画撤回、保健所人員増による公的検査体制拡充、75歳以上の患者さんの一部負担金2割化など負担増の中止、医科・歯科医療機関や介護施設の減収補填などの「社会保障の充実」である。
 私たち歯科関係者は、歯科医師法1条にあるように、公衆衛生の向上と増進に寄与するため、社会保障としての歯科医療および健康指導を担当している。歯科関係者が公衆衛生の一環として行う専門的口腔ケアには誤嚥性肺炎を予防する効果があり、新型コロナ重症化予防にも有効であると分析する研究者もいる。世界で最も感染者数が多い「歯周病」と日々真剣に向き合う歯科関係者は、日常的に感染対策に尽力しており、現時点で治療を通じた新型コロナ感染拡大の報告はない。このことは私たちの誇りである。近年の研究で、歯周病の治療は、認知症の発症・進行を遅らせる、インフルエンザ、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病など全身の病気の予防・改善につながると指摘されている。政府には、歯科関係者が全力を発揮できる環境を、早急に整える責務がある。
 私たちは、暮らしと平和、基本的人権、民主主義、立憲主義を尊重する歯科医師の団体として、新型コロナ特措法・感染症法の改正案に断固反対するとともに、日常の歯科診療が、患者・国民の皆さんの健康を支える「社会保障」や「公衆衛生」のひとつであるとの自覚のもと、感染症拡大防止に尽力する。

福岡県議会議長・副議長 殿
福岡県議会議員 各位
 
感染経路調査拒否に過料を科す県条例案に反対する
 
2020年12月8日
福岡県歯科保険医協会 感染対策委員会
 

 福岡県議会は、新型コロナウイルスなど新たな感染症への対策を進めるため、感染者に、感染の原因となった行動や経路を特定する県の調査に応じることを義務づける「福岡県ワンヘルス及び人獣共通感染症対策等の推進に関する条例(仮称/素案)」を超党派でまとめた。正当な理由のない拒否や虚偽の報告には、5万円以下の過料を科すとしている。
 私たちは、以下の理由から、本条例案に断固反対する。
我が国においては、過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群(注.エイズ)等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である」、「感染症の患者等の人権を尊重しつつ、これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保し、感染症に迅速かつ適確に対応することが求められている」。
 これは1998年に制定された「感染症法」前文の一部である。
 感染力が極めて弱いにもかかわらず、ハンセン病やエイズなど感染症の患者さんたちが、差別と偏見、強制隔離、時には強制不妊手術などにより「基本的人権」を著しく侵害された歴史を振り返るとき、県議会議員をはじめとする政治家、行政担当者、報道関係者、私たち医療関係者、そして県民全体にとって、「感染症法」前文は、胸に銘記しておくべき悲劇の教訓であると言える。
 にもかかわらず、本条例案に見られる、過料という制裁を背景とした強権的な感染症行政は、「感染症法」の趣旨と真逆のものであり、「基本的人権」を侵害するおそれが強く、違憲・違法の疑いが濃厚である。
 東京都では「新型コロナウイルスの検査を正当な理由なく拒否した場合、5万円以下の過料を科す」条例案が提案されたが「罰則がある限り賛成できない」など反対の声が上がり、都議会提出には至らなかった。一方、全国に先駆けて、本県で罰則付き感染症対策の条例が可決されれば、「福岡県の人権感覚はどうなっているのか」との批判が集中する事態となるのは明らかである。
 本県条例案の趣旨説明では、過料の目的を調査の実効性確保としているが、全く根拠がない。調査で重要なのは、互いに信頼関係を築くことであるが、罰則をちらつかせて報告させる手法が信頼関係を生むとは到底考えられない。拒否できる「正当な理由」や「虚偽」の内容も不明確である。
 感染症拡大防止のために最優先すべきは、個人に責任と自粛を押しつける強権的行政ではなく、感染症病床を含む病床削減や公立・公的病院統廃合などの撤回、保健所人員増による公的検査体制の拡充であり、事業主、県民全体への手厚い経済的支援だ。
 すなわち、75歳以上の患者窓口負担2割化など負担増の中止、患者・利用者負担の大幅軽減、診療報酬・介護報酬の大幅引き上げ、医科・歯科医療機関、介護施設の減収補填、こうした社会保障の充実こそが、国、地方自治体には緊急に求められているのである。
 歯科関係者が行う専門的口腔ケアにはインフルエンザを予防する効果があることが実証されている。また、新型コロナウイルスは舌の上でも増殖することから、専門的口腔ケアが予防に有効との指摘もある。私たち歯科関係者は、日常の歯科診療が、患者さん、県民の皆さんの健康を支える「社会保障」のひとつであるとの自覚のもと、感染症拡大防止に尽力していく所存である。
 私たちは、暮らしと平和、基本的人権、民主主義、立憲主義を尊重する歯科医師の団体として、本条例案に断固反対する。
 

菅 義偉 内閣総理大臣 殿
田村 憲久 厚生労働大臣 殿
 
後期高齢者の一部負担金2割化の撤回を求める
福岡県歯科保険医協会
2020年11月26日理事会
 

 政府は11月12日、19日に開催された社会保障審議会医療保険部会で、全世代型社会保障検討会議の中間報告及び第2次中間報告を受けて、「現役並み所得」以外の後期高齢者の一部負担割合を現行の1割から2割に倍増する案について議論、11月24日の全世代型社会保障検討会議では、これらを踏まえて年末に最終報告をまとめるとしている。
 厚生労働省は11月19日の社会保障審議会医療保険部会において、後期高齢者の医療費窓口負担の引き上げについて5つの案を提示した。
 新たに2割負担に引き上げられる対象は、最小の案である年収240万円以上(単身世帯)でも約200万人に上り、最大の案である年収155万円以上(単身世帯)では約605万人に上る。すでに「現役並み所得(=年収383万円以上)」とされた約115万人が3割負担とされていることを踏まえれば、最大で75歳以上の44%が対象となる見込みである。
 この間の議論に関する報道によると、厚労省は2018年度の医療給付実態調査では一般区分の後期高齢者の年間の平均自己負担額が1人8万1000円、2割負担となった場合には高額療養費制度の適用で11万5000円に増えるとする仮定を示し、健康保険組合連合会副会長はこの数字をひいて後期高齢者の負担が2倍になることはないと述べ、日本医師会副会長は「外来だけで(月上限の)1万8000円になる人はまずいない。1割を2割にすると間違いなく2倍になる」と指摘したとされている。
 日本医師会による指摘にも触れられているように、厚労省が示した数字は、入院と入院外を区別しない平均値を基に仮定されたものである。
 そもそも患者の受療権は憲法25条の生存権に基づき患者個人に保障されているものである。患者個人に対して生じる一部負担金について、平均値を持ち出して議論すること自体が極めて不当である。
 受診時の負担が受診抑制の要因となることは、これまで様々な調査や研究結果から明らかにされており、75歳以上の個人の収入分布が他の世代に比べて低位に属することも厚労省の国民生活基礎調査で明らかにされている。
 現状でも低収入での生活を強いられている後期高齢者に対し一部負担金を増額すれば、一層の受診抑制をもたらし、憲法上保障された患者の受療権を侵害することは明白である。
 厚労省が提案する「配慮措置」なる案も、激変を緩和する一時的なものに過ぎず、負担増という本質は変わるところがない。
 特に歯科の受診は他科に比べ、家計に大きく左右されるとの調査研究結果が示されている。一部負担金増額による受診抑制の影響は、より負担の大きな在宅医療の機会も多い後期高齢者には顕著に現れることが予想される。その結果、歯科疾患の診療が不十分になれば、後期高齢者の口腔・摂食嚥下機能の低下や、健康を維持できる年齢の低下が容易に推察され、重症化後の受診は医療費の増大も生じさせる。
 政府は国民医療費の削減を目的に一部負担金の増額を企図するが、その結果生じるのは、健康年齢の低下や受診抑制による重症化後の受診であり、むしろ医療費増額をもたらす本末転倒の政策であるとともに、高齢者の口腔機能維持向上を掲げる政府の政策にも逆行するものである。
 政府は憲法上保障された患者の受療権を侵害する後期高齢者の一部負担金増額を直ちに撤回せよ。

2020年10月1日

厚生労働大臣 田村 憲久 殿

福岡県歯科保険医協会
会 長 大崎 公司
 
実勢価格を反映しない「金パラ」改定制度による「逆ザヤ改定」
抜本的な制度改善を要望致します
 

 ここ数年の異常な歯科用貴金属の「金パラ」価格高騰に関して、当協会を始め全国の保険医協会・医会・全国保険医団体連合会(保団連)では、歯科医師・歯科医療機関と共に実勢価格と保険償還価格との間に生じる著しい「逆ザヤ」の解消を求める運動を進めてきました。
 これらの運動により、厚労省は今年、歯科用貴金属の価格改定について「随時改定Ⅱ」を導入し、7月1日に告示価格を引き上げました。ところが早くも7月22日の中医協では、従来の「随時改定Ⅰ」により、10月1日からの告示価格を30gあたり7万9860円から7万3500円へ6360円引き下げ、本日施行されました。
 10月1日からの告示価格引き下げは、逆ザヤの発生が明白である状況で決定され、実際に改定施行日から逆ザヤとなるという不合理極まりないものであり、歯科医師に怒りが広がっています。
 金パラ逆ザヤ問題の根本が、現在の不合理な価格改定ルールにあることは明らかです。
 第1に、3カ月ごとに改定が検討される今でも、改定施行時の実勢価格と、素材価格を参照する期間とのタイムラグは不可避となっています。今回のマイナス改定の根拠として参照された4~6月の金パラの素材価格は、コロナ禍の需要落ち込みでパラジウム相場が一時的に下落していましたが、中医協の開かれた7月時点では、需要回復と金地金相場の高騰により上昇基調となっており、金パラの実勢価格は一時8万2500円(30g・税込)となるなど、再び逆ザヤとなりました。このように、実勢価格が明らかに上昇している場合であっても参照期間の素材価格が下落していれば告示価格を引き下げるという、極めて矛盾した制度となっています。このタイムラグにより、随時改定Ⅱによっても逆ザヤの解消状態は極めて短期間に限られました。
 第2に、随時改定Ⅰと随時改定Ⅱでは、改定の要件である参照価格変動の幅に差異が設けられており、実勢価格を反映しないものとなっています。今回のように、随時改定Ⅰで5%以上の下落があり引き下げが発動されても、現下の実勢価格上昇基調の下では、1月に予定される随時改定Ⅱでは15%以上の変動がなければ改定は実施されません。随時改定Ⅱの判断期間において15%未満の上昇にとどまった場合には、逆ザヤをさらに3か月間強いられることになります。
 厚労省は、告示価格変更に対する歯科医療機関の事務負担増大を理由に挙げて随時改定ⅠおよびⅡの価格変動幅の差異を説明していますが、これはまったく不合理な主張です。
 現に歯科医療機関では今年、①今年4月の通常の改定、②7月の随時改定Ⅰ、③10月の随時改定Ⅱと、3カ月ごとに3回にわたって告示価格変動に対応しており、何ら問題は生じていません。9月1日に突然保険収載された前歯部CAD/CAM冠に至っては、保険適用の前日の告示でしたが、歯科医療機関は対応を行っています。問題は告示価格変更による事務負担増大ではなく、逆ザヤによる歯科医療機関の経営圧迫そのものにあります。
 全国の保険医協会・医会・保団連では、歯科医療機関の経営を圧迫し続けている金パラの実勢価格と保険償還価格の乖離をなくす抜本的な制度の確立の必要性を指摘してきました。
 地域医療の担い手である歯科医療機関を維持する責任を負う政府・厚生労働省が、金パラの市場実勢価格を適時に調査・把握し、実態に即した告示価格を設定するための抜本的な制度改善を実施することを強く求めます。

以上

福岡県歯科保険医協会

  • ・ふくおか女性歯科医師の会
  • ふくおか子どもの医療を守る会
 
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