福岡県歯科保険医協会タイトル

 ●政策部解説

新型コロナから見えてきた
危機管理対策、モノ、人、システム
政策部解説vol.127 2020.6
 
 国は、医療関係予算を削減した結果、ツケが回ってきました。平常時には現在のような事を想定せず、場当たり的な対応で「失敗」してしまった感じがしてなりません。
 最近の報道から分かってきたことです。「人、物、システム」についての問題があると思います。まず「人」です。例を挙げると医師数です。OECDの国別の2019年の報告書によると、日本の人口1000人当たりの医師数は2・4人で、OECD平均の3・5人よりも少なく、加盟国36ヵ国中、32位になっています。日本の医師不足は長らく認識されてきた問題であり、特に地方の深刻な医師不足は深刻です。そして「物」ですが、「新型コロナ」が流行し始めて、PCR検査を実施するネックになっているのが「保健所」であることは、検査数が伸びない原因です。(現在では検査できる環境が変わってきました)
 地域の公衆衛生を担う保健所、保健所職員数は、1994年の「保健所法」(後に「地域保健法」)により減少しています。例えば、1996年まではずっと全国850カ所前後で推移し、保健所数は、1996年845ヶ所(職員数33698名)、1997年706ヶ所(29948名)、2000年では594ヶ所(30353名)、2009年、494ヶ所(28259名)、2020年469ヶ所に激減し保健所数は、改革前の55%くらい、職員数は82%になりました。例えば、福岡市では各区(7区)に全て保健所がありますが、大阪市(24区)は1カ所のみでお寒い状況です。
 そもそも、保健所は「公衆衛生の向上及び増進」を担う機関として位置づけられています。このように、保健所数、職員数が激減されると当然ながら、少人数で広範囲の地域を担当することになり、職員の業務過多と住民密着の業務は困難になります。
 そんな所に、今回のPCR検査の決定を国から丸なげされました。その上、「体温が何度あって、それも何日続かないと受け付けない」とも取れる「御布令」。検査数が伸びなければ当然、陽性者の数も増えません。逆に、陽性者の数を増やしたくなかったから検査数の抑制をしているのかとも勘ぐってしまいます。
 N95マスク、防護服、人工呼吸器ももちろん十分ではありません。人も少ない上に、物もない、おまけに方向違いのシステム……「インパール作戦」をいまだにやっている気がしてしまいました。

現実離れした金パラ改定
政策部解説vol.126 2020.5
 
 昨年来、ずっと金パラ価格の問題について、頭を悩ましている先生方の声を数多く伺いました。当会会員の先生、そして未入会の先生方から多くの院長署名のFAXでその想いを頂いたこと、深く御礼申し上げます。
 度重なる厚労省交渉(行政的行動)、国会行動(政治的行動)から一定程度、金パラ価格臨時改定を行うまでに至りました。しかし、実際は①「素材価格の変動で補正率を決める仕組みはそのまま」、②「15%の変動率があった場合、3ケ月(直近では7月に可能性)で改定」の2つ。
 ①について、そもそも素材として12%金、20%パラジウム(どちらも重量比)を含んだ「金パラ」を保険材料として決めて、その「製品価格」を、「素材価格」から算出するのには根本的に無理があります。昨年の10月「金パラとラーメン」の記事「素材(原材料、ラーメンの具材)で金パラ(製品、丼に盛られたラーメン1杯)を決めることのオカシな決め方」をご一読頂ければ幸いです。その基本的算定方法は放置したままです。
 ②について、「あまりにも急激に高騰した金パラの価格改定が6ケ月の間隔では実勢価格との乖離が極めて大きいのでその緩和措置として設けられた」と個人的には良心的に理解しています。これは、当協会や全国の保険医協会、保険医会、保団連が国会に赴き活動した結果の反応かと理解しますが、この「15%」が極めて問題であります。例えば、素材が高騰したが、変動率が14・9%であれば対象とならないと言うこと。不合理なことであります。6ケ月の改定は5%であるのだから5%が妥当であると素朴に考えます。それと同時に、価格決定の時期とその方法は相変わらずブラックボックスである。
 多少語弊や理解不足のところはご容赦願いたいが、医科では「薬の価格」を決める時には、販売している会社(複数)に問い合わせ、それを参考に決めているとの事です。薬の販売会社は数多くあると思いますが極めて理解できる価格決定のプロセスかと思います。金パラでも販売会社から価格を調べ、「金パラ製品」として保険材料価格を決定するのは容易なことではないでしょうか。医科に出来て、歯科に出来ないのはなぜ。
 そんなモヤモヤしていたところ、衆議院議員の田村貴昭議員から「金パラ問題」を国会質問することからお話を伺いたいとの連絡がありました。4月1日夜に議員とお会いし上記のお話で懇談を致しました。それから僅か5日後の4月6日(月)に、国会質問が行われました。質問時間が15分間と一つの問題としては今までになく長い時間を費やして質問されました。極めて迅速で的を付いた質問がなされました。厚労省の官僚からあまりはっきりした回答がありませんでしたが、最後に、厚労大臣が「検討する」との今までになかった答弁を得ました。
 当会からの運動がひとつ前進した感がありました。田村衆議院議員には深く感謝申し上げますとともに、これからも国会活動を積極的に行いたいと思います。 

「同調圧力」 
政策部解説vol.125 2020.4
 
 3月になりましたが、新型コロナウイルス感染問題は、まだまだしばらく続く感があります。既に市中感染の段階になった模様です。読者の先生方、そしてスタッフ、ご家族の方々におかれましてはくれぐれも予防にご注意されてください。
 内閣は、この感染問題を何とか早く解決しようとしていますが、国民にはどうもそれが上手くいっていない感があります。
 この間を時系列に書きますと、2月27日(木)の夕方、ニュースで「3月2日から全国一律、春休み始まりまで小中高は休校要請」との総理からの強い指示。誰もそんなことを聞いていなかったので当惑し、大混乱。対象は、小学生約640万人、中学生約320万人、高校生約320万人。これにはあまりにも唐突であったので、国民の怒りを買い、28日には文科大臣が「地域や学校の実情を踏まえて行うよう、各学校の設置者の判断を妨げるものではない」と訂正とも取れる発言がありましたが、もう世の中は「休校ムード」になってしまい、今更、現場に判断を委ねても戻らない状況になりました。
 そんな時、当院を訪れた患者さんが「27日の夜には、総理辞めろ、と言うママ友LINEがありました。翌日の28日にはもっと過激な罵詈雑言が送られてきました。LINEの内容が総理総スカンになってきたのですよ。それも多くのお母さんが」「私の子どもも、3月2日から修学旅行がある予定なのですが、もうキャンセルになりました。残念で仕方ないです。準備するものも買ってお金をかけているし、高校の一生の思い出がなくなりました。子どもには、今度選挙に必ず行って、総理の党には入れないように言いました。」と、いつもは穏やかな方が何時になく強い調子でお話されました。恐らく、こんな風に考えた主婦の方はかなり大勢いると思いましたが、なぜそうなったのか考えてみました。
 新型コロナウイルス感染拡大を阻止したいと言う気持ちは納得出来ます。しかし、決め方が如何にも唐突で、相談がなかったとの事でした。おまけに、日本人には多いのですが「他の人がやっているから自分もする」という同調意識、今回は総理から発出されたものだから、逆らえば何かペナルティーがあるのかもしれないと思った地方公共団体もあると思います。
 世の中の流れに逆らって自分の意思を持ち貫くのは容易なことではないでしょう。同調圧力の強い日本だからこそ、今回の「要請」などトップダウンの指示は慎重になされることが望まれます。
 この記事が読者の先生方に届く頃には新型コロナ感染が、収束に近づいていることを切に祈ります。

安倍政権の経済政策 「株高」への誘導策
政策部解説vol.124 2020.3
 
 戦後最長の安倍政権が今も続いています。「世界一企業活動しやすい国づくり」というスローガンで2012年12月に誕生した安倍政権ですが、もう今年は2020年です。
 ご承知の通り、安倍政権の経済政策の根本は、「円安」と「株高」です。企業に優しい、特に輸出企業にという事であれば、円安、株高でしかも法人税を払わなくてもいい制度ということになるのでしょうか。
 官製相場で「株高」に誘導し見かけ上、企業は、豊かになっています。しかし、株式に回る「お金」をどのように調達するかが問題です。現在の東証の日経平均株価が2万3千円代となっていますが、これはどう見ても実際より高い株価です。以前にも何度か述べましたが、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は2014年10月31日からそれまでのポートフォリオの変更を行いました。そこでは、ポートフォリオを国内外の債権比率71%から50%に落とし、逆に国内外の株式運用比率を24%から50%に上げました。これにより、株式相場に公的年金資金が投入され株式を売り買いしています。日経平均が2万3千円代とは、概ねGPIFが買支えした状態になっています。株高にするために、国民から集めた年金をドンドン注ぎ込んでいる形になっています。「株式の下支えのためなら、形振り構わない」方法です。
 因みに、去年7月では、東証1部の時価総額598・6兆円。GPIFが全体の6・3%を保有しています。
 更にその上、株式相場を活性化させ株高にするには、GPIFや会社組織という既存のレベルから、個人投資家を育てることが必要とされ、それが将来の「株式投資」での重要な位置づけとなると思っています。
 再来年の高校の授業科目に「投資」の話題が出ています。個人が株式(ファンドなど)に投資する素地は、若い頃より株式が身近なものにすることで生まれます。株式投資の善し悪しはさて置き、このやり方は、「マクドナルド」の「味覚のデータベース」戦略を見習ったのかとも思うのは考えすぎなのでしょうか。
 投資の基本を身に付けることと株式投資をすることは一線を画す必要がありますね。
 

動き出した不平等条約と売国政策
政策部解説vol.123 2020.2
 
 新年になり、それと同時に「日本売り」が元旦から始まりました。
 日米FTAが発効された日本にとっては一部の儲けを目的にした財界を除き、深刻な影響を及ぼす事態が予想されます。
 日本の農業にダメージを与えて、その代わり自動車等の優遇という事になるのですが、これがどうも日本にはかなり不利なものです。例えば、アメリカ産の輸入牛肉の関税は現行の38.5%から段階的に引き下がり、2033 年度に9%になります。豚肉は安い部位に税は482 円/㎏から2027 年度に50 円/㎏になります。
 ところが引き換えの自動車・自動車部品の関税削減・撤廃は事実上、「継続協議」で何もなっていないのです。一方では数値目標が決まり、他方では「努力する」なのです。
 これで、日本の農業市場は7500 億円の打撃ということも言われていますが、もっと深刻なのは「安全性」です。以前からTPPの問題の時に書きましたが、「非関税障壁」の撤廃が、ここ数年来徐々に進められています。例えば、先ほどの「アメリカ産牛肉」をとると、BSE対応として、月齢制限を生後20 ヶ月以内だったものを30 ヶ月にし、危険部位除去もされていないまま輸入できるよう昨年5月17 日に完全に安全基準が変更されました。また、牛肉には成長ホルモン剤(日本では使用禁止)が入っているのに、なぜか日本は検査なしで輸入されることになっています。(因みに、今はEUでは輸入禁止ですが、EUがアメリカ産牛肉を止めてから乳がん発生率が多い国では45%減少という報告もあります)
 雑駁に言うと、安全基準を下げて、そして、関税を下げ、日本で商売といったことになるのでしょうか。もちろん、それだけには留まりません。「種子法廃止」の問題もあります。穀物そのものを制するために、戦後日本で培った穀物(特に稲)を遺伝子組み換え(GM)やF1種子に変えさせ、安全を脅かし、日本人の暮らしと健康を台無しにしながら、アメリカ等の多国籍企業に日本を売る政策が元旦からスタートしてしまいました。
 

来年度の診療報酬改定で気になったこと

政策部解説vol.122  2020.1

 
 2020年は社会保険診療報酬改定年度、いわゆる「保険改定年度」です。診療報酬額を決める根本は「財務省」である事は自明です。その財務省から決められた診療報酬予算を厚生労働省が診療行為に決定(貼り付け)して、我々保険医が行う診療報酬が決まる流れになっています。
 「1年間の医療費が42兆円」と言われていますが、日本の1年間の国の予算(医療給付費)は11・8兆円(2019年度)であります。決して42兆円そのままが国家予算から出ているのではないことを最初に申し上げます。
 診療報酬削減を狙う財務省は、財政制度等審議会財政制度分科会において、診療報酬本体が賃金や物価と比べて高い水準となっているとして、2020年度診療報酬改定でマイナスとすることを提言しました。
 また、国民医療費が過去10年間、年平均2・4%ベースで増加し、その伸びは、医療従事者の給与を賄う雇用者報酬などの伸びを大きく上回っており、これ以上の負担増を防ぐには医療費の増加を抑制することが必要、と主張しました。
 このように主張するために、それを裏付けるデータが示されているのですが、これがどうもトンデモない処理をしているのです。図1、財務省のグラフは1995年を100として起点にしています。
 ところが、図2に示すように、2000年を100として起点にすると、医療職種賃金のほうが、2002年以降、診療報酬本体より上回っていることが読み取れます(図2は本田孝也・長崎協会会長作成)。青の破線グラフと、黄色の折れ線グラフの上下が逆になっています。
 さらに言うと、2002年以降、医療従事者の給与は診療報酬を上回り、「身銭を切ってスタッフの給与を出す」構造になっているのです。このように、財務省の「まことしやかな」データが診療報酬削減の基礎となっていることに、やるせなさを感じます。都合のいい、いわば「デタラメ」なグラフを財政制度等審議会財政制度分科会に出して、出席した委員をマチガッタ方向に誘導しているとさえ思ってしまいます。

消費税は社会保障費になっているのか?

政策部解説vol.121  2019.12

 来年度の医療財政のことが気になっていますが、11月に財務省が提出した財政制度分科会で出された資料のお話です。財務省は、「診療報酬を1%引き下げは概ね4600億円の費用を削減する効果が見込める。保険料は年々上昇し、急速に減少していく現役世代の大きな負担となっている。国債発行に大きく依存し、将来世代につけ回しを行っている」と。
 財務省の論理からすると「それなりに正しい?」のでしょうが、制度の大きなマチガイがあると個人的には考えています。
 そもそも「消費税」の問題を論じる時、「必要な医療費、増加する医療費のため」と散々言われ、それを素直に信じた国民も、医療者も多かったと思います。ところが、実際はどうでしょう。財務省は「国債発行に大きく依存」としています。
 ここでまた問題です。国債発行がいつの間にか「建設国債」から「赤字国債」に変遷してそれを、財務省の言うことでは医療費不足に使っている、と取れるのです。「論理矛盾も甚だしい。」と感じます。
 現在のお金の流れを見てみると、徴収された消費税がそのまま法人税減税分に移行し、大きな企業は、内部留保として毎年途方もない財を成しています。数字で示すと、2017年度で446兆円、2011年(第二次安倍内閣発足)では282兆円でした。この6年間右肩上がりで58%増加しています。
 家計の事として置き換えてみると、この6年間で貯金が58%も増加したご家庭はあるのでしょうか。もちろん、利益追求を第一目標としている企業が「儲けてはいけない」とは思っていません。むしろ株式会社なら儲けることが目標であって然るべきです。
 問題は、税制というシステムでお金が貯まるシステムです。物を売って儲かって所得が増えるという普通のシステムではないのが問題なのです。
 法人税の控除があまりにも多くあるシステム、それがこのように異常な程の内部留保になっていると感じます。日本を代表する大企業がそれなりに払うシステムになること、そして医療費増加は「悪」でないと言う国の方針になること。これが社会保障充実に繋がると思います。
「税金を払わない大企業リストの公表」(富岡幸雄氏)の本を読むと納得します。

保険診療が成り立つことの切なる願い

政策部解説vol.120  2019.11 

 政策部解説も120号を迎え、執筆し始めて10年間の歳月が過ぎました。数日前、ある過疎地方の歯科医が監査を受け、架空請求し診療報酬を不正に受け取ったことが判明し、その結果、5年間の保険医停止を受けたと報道されていました。確かにやったことは弁護出来ませんし、してはならないことです。しかし、その理由が「生活が成り立たない赤字が出て、収入が欲しかった」とのことです。「遊興費」にかける訳でもなく「生活が出来ない」ことなのです。
 ここで最近の歯科保険医療の現実を数字で確認します。医療経済実態調査からみた歯科医院の収支差額(最頻値)は、1993年から減少の一途で、データのある2016年では1ヵ月あたり51万9000円です。1993年が125万7000円ですから、このデータによると約4割にまで落ち込んでいます。個人的にはこの数字は、肌感覚で実感出来る数字かと思っています。
 他方、国民医療費は、1992年(23.5兆円)と2017年(42.2兆円)を比較すると伸び率が1.8倍。特に、歯科医療費をピックアップすると2.3兆円から2.9兆円で、率にして1.26倍です。伸び率を同じ1.8倍だったとすると2017年の歯科医療費は2.9兆円から4.14兆円になるはずです。
 最初の話に戻りますと、過疎化の進行している地方では、患者、住民の数も減少して、今の保険点数では経営が成り立たなくなりつつある歯科医療機関も多く存在していると察してしまいました。
 現在、保団連では厚労省に歯科保険医療費の10%アップを要求する署名のご協力を、会員の先生方にお願いしています。背景にはこのような現実があります。また、10月から金パラ価格が改定されましたが、30グラム換算で(1685円/g)50,550円です。最近、わたくしのところに連絡のあった通販の金パラ価格が58,000円/30g。消費税増税10%を勘案しての買値、58,000円×1.10=63,800円(消費税額5,800円/個)、30gを1つ買うごとに、63,800-50,550=13,250円のマイナスになります。先月よりさらに赤字幅が広がりました。
継続的に良い歯科保険医療を行うには、歯科医院の経営が安定することが不可欠と思います。

「金パラ」と「ラーメン」

政策部解説vol.119 2019.10 

 消費税10%になってしまうかもしれない10月が来ました。なし崩し的に決定された形で個人的にはどうも納得出来ずモヤモヤしています。財務省のウェブサイトには「2019年10月に消費税率が8%から10%に引き上げられる予定です」と2019年9月になっても堂々と表示されています。「予定」ですので、「決定」でなない、とも読み取れます。
 丁度、診療報酬改定も重なった10月ですが、金パラの告示価格が、1,685円/gに変わりました。保険医が買う30g換算にして50,550円です。しかし、ある通販の8月29日現在で54,200円、我々が買う時これに加えて、消費税が掛かります。8%では59,184円、10%になると59,620円になります。この状態が続いたとしたら、10%の消費税では9,070円のマイナスが生じます。
 ここで2つの問題があります。一つは金パラ価格の決定過程です。金パラの保険価格は「素材価格」から決めるやり方を採用しているのですが、これが市場価格との差を生じる根本原因だと思います。素材価格から決定ということは、金、銀、パラジウムの金属価格(いつか分からない時の時価)からそのパーセンテージで金パラ30gの保険材料価格を決定するやり方です。
 ところが、我々保険医が購入するのは、素材ではなく、30gの金パラ製品なのです。それには、合金にする手数、販売コスト、流通経費などは反映されていないのです。
 例えて言うなら、ラーメン屋さんで「ラーメン」を食べる時を考えて見てください。お店で出されたラーメンには、「麺」「焼豚」「ネギ」「メンマ」「紅生姜」「カマボコ」などが入っていますが、麺が「何円」、焼き豚が「何円」などそれぞれの単価を出して、その合計がラーメンの価格として出されていることはありません。当然、作るにいたる光熱費、食器などの経費など諸々と店の儲けが反映されているのです。
 話を戻すと、素材から金パラ価格を決定する事は、市場価格より低い金額になることが予想されます。金やパラジウムが右肩上がりで高騰する時期には、決定した時は既に金属価格がそれより上昇しているので、更に差が出てしまい、医療機関がその「損」を被ってしまいます。
 もう一つは、消費税。以前から、この「政策部解説」では何度もお話していますが、医療に掛かる消費税は「損税」となってしまいます。
 保団連では医療機関の損税が保険診療報酬に対しての比率を調査しました、2018年6月25日号の全国保険医新聞では、歯科医療機関の損税割合は2.31%でした。この時点では8%でしたので、10%になればまだまだ上がると予想されます。

考え込んでしまう選挙報道

政策部解説vol.118 2019.9 

 参議議員選挙(参院選)が終わり、結果は与党(自民、公明)が、改選議席の過半数を取った形で終わりました。報道では、自民は改選前に比べると議席を減らしましたが、前回が勝ち過ぎたのである程度は予想通りで、立憲民主党が議席を伸ばしたとのことです。これは、選挙結果ですので誰が見ても分かることです。
 ここ最近、選挙期間のTV等の選挙関連の報道が、以前に比べて少なくなった気がします。ところが、選挙の投票時間(7月21日 20時)が終了するや否や、堰を切ったかのように「どの政党の誰が当確、当選した。政党分布がどう変わったか」など、殆どのチャンネルが先を競って当選経過を発表していました。本来、選挙期間中に各政党や候補者の政策や課題などを世の中に発する責務があると考えますがどうも違うようです。今回の参院選の選挙期間中には、選挙関係報道より、芸能関係のスキャンダルが極めて多くの時間を取って放送され、国政と芸能のどちらが大事なのかとさえ思えてきました。
 思えば、2年前、保団連夏季学習の特別講演で毎日新聞特別編集委員をされていた故・岸井成格(きしい しげただ)氏が「自由な報道をすることは、今の政権になって窮屈になっている。報道とは政権には批判的であることが使命」と、お話をされていたことを思い出します。それからすると最近は、マスコミは政治報道を避けているとしか思えてなりません。因みに「世界の報道の自由度ランキング」で日本は、2010年11位(鳩山)、11年14位(菅)12年22位(野田)、13年53位(安倍)以降下がり続け、とうとう2017年72位(安倍)となっています(カッコ内はその当時の政権)。
 報道の自由度が下がり続けているのは政府への「忖度」なのだろうか。

「消費税10%は阻止しなければならない」
政策部解説vol.117 2019.8
 参議院議員選挙の結果、私たちの生活に関わる政策が、でどのように変わるのか大変気になります。先ず、消費税です。これこそ生活に直結、一番関わります。そして私たち保険開業医に直結した問題と思っています。
 2014年4月に8%になったのですが、消費税を上げる前に自民、公明の責任者が盛んに「5%から8%に上げた消費税は、全額社会保障に充てます」とマスコミを通して話していたことを思い出します。
 今回も、「2%増税分の5.7兆円の内、1兆円は赤字国債抑制に充てる以外は社会保障関連に回す」とのことですが、5%から8%になったとき増税分の1割程度しか充てられなかった事を思い出すと、どうもそのまま受け入れることは出来ません。
 それに、個人消費の落ち込みは避けられません。8%になった時に生じた個人消費の落ち込みは、5.4兆円、GDPも2%落ち込んでいます。GDPの6割を占める個人消費が2014年度は前年度の304兆円から294兆円と急落し、2018年度に至っても8%増税前年の2013年度の水準以下でその影響は凄まじいものがあります。
 ここに至っての消費税10%は生活が大変になることは必至と思われます。
政府の今年度の予算を見てみますと、増税分の負担が5.7兆円、景気対策として6.6兆円、になっています。
6.6兆円の景気対策の内訳は、住宅ローン拡充0.3兆円、ポイント還元・プレミア商品券2兆円、幼児教育の無償化(制限付き)3.2兆円などになっています。
 よく見てみると、増税分より0.9兆円も持ち出しをしていることになっています。それに、景気対策の恩恵を受けない(現金払い、小さい子どもがいない、住宅を持たない)人には相当過酷なものとなると考えます。持ち出し予算がこんなに大きいものなら、消費税10%にする必要などあるのでしょうか。
 最も申し上げたいことは、景気ではありません、個人の家計が問題なのです。

「参議院議員選挙の重要性」
政策部解説vol.116 2019.7 
 この「政策部解説」が当機関紙に掲載される時には、今国会は終わり、参議院議員選挙(参院選挙)が目前となっていると思います。この参院選挙は3年に一度の通常選挙ですから「選挙の論点」という意味では、総選挙のように明確なものはないように思われます。しかし、そうではありません。今回は、「憲法改正発議」が出来るか否かが掛かった選挙で、憲法改正の発議は、憲法96条にあるように、「衆参各院総議員の2/3以上の賛成」が必要です。そして、国民投票となっていきます。
 具体的には、今回改選数124議席。改憲勢力(与党と一部の野党)が88議席以上取れば容易くクリアすることになります。逆に、88議席に届かなかったなら「物理的に」発議は不可能となります。
 さて、第42回定期総会の市民公開講座で講師をされた護憲派の伊藤真弁護士のお話を一部記します。「軍事力・抑止力を高めても戦争のリスクからは免かれない。抑止力は戦争をすることが前提である」「憲法18条の苦役からの自由」が制限され「徴兵制」は可能になる。「第73条の2、及び、第64条の2、緊急事態条項では、内閣が人権制限を可能に出来、議員の任期はいつまでも続けられ、そのまま政権が続く」「国民投票法の問題点は、最低投票率、絶対得票率の規定はないから国民少数による改憲の危険がある。投票運動の広告資金、事前運動も規制はない。テレビCMの規制もない。であるから、資金力が投票結果を大きく左右する」「手続法を公平・公正なものにすべき。発議させてはならない」
 個人的には、私の親族に、戦中、特攻隊員がいました。出撃命令が出る前に、「敗戦」を迎えました。また、機銃掃射を受け、間一髪身体の50センチ外れて当たらなかったなど、小さい頃から多くの戦争体験を身内から聞くことで、戦争の非情さ過酷さ、戦後の大変さを肌で感じて育ちました。今、この世に存在しているのもこんな偶然の重なりからだと思っています。
 最後に、伊藤真弁護士のお話でドイツの牧師の「マルチン・ニーメラー牧師」の言葉が心に残りました。紹介します。「ナチスが最初共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった。私は共産主義者ではなかったから。社会民主主義者が牢獄に入れられたとき、私は声をあげなかった。私は社会民主主義者ではなかったから。彼らが労働組合員たちを攻撃したとき、私は声をあげなかった。私は労働組合員ではなかったから。そして、彼らが私を攻撃したとき 私のために声をあげる者は、誰一人残っていなかった」
 熱気に流されない冷静さを保ち、おかしいことには、おかしいと気づいた者から声を上げることが大切です。

憲法、ずっと平和であり続けること
政策部解説vol.115 2019.6  
 元号が令和に変わりました。「平成の時代には戦争がなかったということが一番重要だと思います」とお話された今の上皇陛下の退位前のお言葉ですが、これからの令和時代にも平和がずっと続くことが望まれます。
 さて、「日本国憲法」の問題がクローズアップされています。改憲なのか、そうでないのか。改憲ならどのような改憲なのか。これはあまりはっきり決まった改憲案があるようには思われません。今の段階では、日本国憲法9条についての論議がされていると思います。
 先日、福岡県弁護士会で憲法改正についての護憲派と賛成派とのシンポジウムがありました。弁護士会の中にも護憲派と改憲派の弁護士がいることに些か驚きましたが、そこは法律家の集団です。理路整然としたシンポジウムだったと伺いました。その討議内容は省かせていただきますが、護憲派と改憲派の弁護士さんの一致点は、「今の日本国憲法9条が変われば、今のままの状況ではない」ということでした。
 この「今のままではない」と言うことから想像することは、戦争や紛争に巻き込まれやすいのではないか。と個人的に不安を覚えました。改憲なら、それはそれとして国民に分かるように、きちんとした説明がなされなければなりません。まさか、騙すとか欺く、誤魔化すことなどないことを祈ります。
 私たち歯科医が、歯科医療ができるのも、「平和」であるからと常々思っているところです。平和であることの有難さ、尊さを感じます。今年の当会の総会(5月26日)には伊藤真弁護士に記念講演をお願いして憲法、平和についてお話していただきました。今後も当会は、平和と憲法のかけがえなさを発信し続けていきます。

口から入るものは安全なのか
政策部解説vol.114 2019.5  
 最近、「国民の食と農やくらし、いのちを考えるセミナー」(JA福岡中央会主催)に参加した。講師は東大大学院の鈴木宣弘教授。以前から、輸入食品の添加物やGM(遺伝子組み換え)、牛肉のBSE、牛肉生産時のホルモン剤の使用など食の安全には気掛かりな事が多くあった。また、「食」に関連した種子法廃止、漁業法改正、水道法改正が行われたことに危機感を覚えているが、その危険性を殆どのマスコミは報道しなかった。昨年の本誌に種子法廃止、そして水道法改正の記事を掲載しているので気になる読者の先生方は一読をお勧めしたい。
 さて、表題の「口から入るものは安全」なのかと言うと、疑問符が付いてしまうと言うのが鈴木教授のお話。例を上げる。日本は、アメリカの穀物に世界一依存している。日本に輸出される小麦、大豆、トウモロコシにはラウンドアップがかけられている。もちろん、これらの穀物はGMである。世界ではGMとラウンドアップの発がん性が広く認識されている。こういうことから、EUはアメリカからの輸入に規制を強めた。ところが、日本は逆に、アメリカの要求に屈し、ラウンドアップの残留基準を多いもので100倍以上に緩和してしまった。当然、私たち日本国民は、毎日危険に晒されて生活している。
GM表示については、納豆などにある「遺伝子組み換え表示」。日本では重量で上位3位、重量比5%以上の成分について表示義務があるが、これが国際的には非常に甘い。BSEの問題について、輸入されるアメリカ牛の月齢制限を20ヶ月から30ヶ月に引き上げた事を以前本誌で書いた。日本政府の発表では、30ヶ月の牛は安全とのことで緩和されたが、これには根拠がない。極めつけは、アメリカはBSEの検査が行われていない。そして、そのまま日本に輸入される。その上、牛肉の危険部位の除去も行われていない。「危険極まりない」。
 最後に、「科学主義」と言うアメリカの主張を紹介する。言葉自体は何だか、良さそうな聞こえである。その実態は、日本が科学的根拠に基づかない国際基準以上の厳しい基準や措置を採用しているが、「低い基準のTPPに合わせろ」と言うのがアメリカ。根拠として「人が何人死んでも、その因果関係が特定できるまでは規制してはならない」のがこの科学主義。EUは「予防原則」でアメリカが何を言おうが危ないものは止めるが、日本はなぜかアメリカの言いなりである。「毒であると確定するまでは食べ続けろ」と言うのである。
 歯科医は口腔に関してのエキスパートであるが、口から入るものが今、どんなに危険になっているか熟考する必要があると考える。

不景気も、統計一つで好景気
政策部解説vol.113 2019.4  
 タイトルの標語、すでに先生方はご存知でしょう。厚労省の統計不正問題の最中、タイミングよろしく総務省が定めた2月1日の「統計の日」に標語募集に寄せられたものの一つです。余りにも統計不正に関係する辛辣な標語が多かったので急遽取り止めになったとの噂です。統計が不正な上に、それを隠蔽する。そして国会で追求されると理由を曖昧にする。これは他人事ではありません。ここ6ヶ月の金パラの問題です。前月号でも述べましたが、5%の価格変動があったら半年後の保険材料価格を変える、事になっているのですが、今年4月では保険改定がありません。因みに、私の利用している通販では3月2日現在54,100円(30g当たり)、去年9月25日では41,900円。その差額は12,200円。実に29%の値上がりです。
 さて、「5%の変動で保険材料価格を変える」はずが、29%でも変わらないのは厚労省の立派な「統計」があるからなのでしょう。先月号では厚労省からの情報開示がないと話しました。これに対して、保団連では情報開示請求を行いました。このまま黙っていては社会保障としての歯科保険が崩壊してしまうことを心配しています。
 表題のタイトルを変えて言いますと「金パラ価格、統計一つで据え置きか?」 こんなことでないことを切に祈ります。

4月以降の金パラの価格は据え置き?
政策部解説vol.112 2019.3 
 先月の記事で金パラ価格の去年9月からの推移のお話をしました。その後の金パラ価格は相変わらず高騰しています。2月6日現在で配信された金額は49,500円(税抜き)。ブランド品G社の「CW」は1月末に50,500円(税抜き)と伺いました。2018年10月改定の保険価格が41,000円から考えると、「上下5%の価格変動がある場合は、半年後の金属価格は変更する」ことになっていますが、4月以降の金パラ価格は2019年4月では改定なし、とのことです。
 この半年で約20%の変動があるにも関わらず「赤字で金パラを使え」と言うことです。もっと言いますと今年10月まで、この1年間、金パラの点数はずっとそのままです。
 会員の先生なら誰でも素朴な疑問が出ますね。「なぜ改定されないのですか?」「改訂の根拠となる資料は提示されないのですか?」などなど……
 保団連では毎年、厚労省との交渉を行っていますが、金パラ価格変化の根拠となる資料の提出を求めたことがありましたが、資料は開示されませんでした。こんなことを思っていると、今、世間の話題になっている厚労省の「毎月勤労統計の資料不適切調査」「隠蔽体質」、この2文字が真っ先に出てきます。敢えて「金パラ問題」と言わせて頂くとすると、調査の方法とそれを開示できないことがここにもあるのかと自然に考えてしまいます。改定がないなら、誰にでも納得できる説明を行うことが説明責任でしょう。
 さて、1月27日に行われた、保団連代議員会では当会の浦川先生がこの件についての発言がなされました。「保団連は厚労省交渉を行い、誰にでも分かる説明を求めていきます」との回答を得、今後交渉を行います。

最近の金パラ事情
政策部解説vol.111 2019.2 
 去年の秋から金銀パラジウム(金パラ30g梱包)の金額が鰻のぼりです。読者の先生方におかれましても痛感されていると思います。
 私の所に、ある通販サイトから金パラ価格の変動通知が不定期ですがメールで届きます。ずっとその変動を見ていますと実に急上昇していることが分かりました。ただし、先生方がディーラーから購入される際には、この価格に比べ多少の上下があることを予めお話ししておきます。
 数値を列挙しますと2018年8月21日41,900円、10月3日43,000円、10月29日44,700円、12月5日45,600円、12月28日48,000円(金パラ30g梱包1箱当たり)です。9月から12月の約3ヶ月間で6,100円価格が上昇しています。
 金パラメーカーの営業マンに伺ったところ、今の保険診療(2018年10月改定)では41,000円が設定価格ですので、大幅に割を食った状態になっています。
 原因は様々ありますが、金とパラジウムの価格が高騰していることに原因があります。特にパラジウムは産出国が南アフリカ、ロシアなど数カ国しかなく産出量も限定されて多くなく、市場規模が小さい。それゆえ投機規模によって簡単に価格が上昇する。また、パラジウムは自動車排ガス対策に需要の80%が使われているので、中国などの自動車新興国の自動車生産量が増加すると当然価格が上昇していく。
 こういった状況下において、細々と経営していく我々歯科保険医は、その価格に青色吐息です。作れば作るほど「赤字」になる事を余儀なくしなければならず、国民の健康を守るはずの「社会保障」が、赤字覚悟の診療となっているのが現実です。以前は2年に1度の金パラ価格の改定だったものですが、その変動が大きくなったことから、今では6ヶ月に1度の改定になっていますが、これでは追いつきません。
 そもそも、今の金パラが保険歯科代用材料として適しているものなのか、時価で購入する事が社会保障の材料として妥当なものなのか、一括して政府が買い上げ、それを保険医療にしてはどうなのか再度一考する必要があると思います。

保険算定の解釈
政策部解説vol.110 2019.1 
 

  •  昨年(平成30年)4月の診療報酬改定では実に煩雑な算定要件となりましたが、先生方におかれましては既に慣れてこられたと思います。協会、保団連では今次改正での収入の影響を調査致しましたが、1/3以上の医院では減収というアンケート結果を頂きました。様々な要因があると思われますが、その一つには複雑な算定要件の変化の理解が徹底されていないこともあると思っています。保団連は厚労省との交渉を定期的に行い、不合理是正を要求しています。保団連交渉の結果、見た目には点数は変わらないけれど、算定要件が緩和され点数の増加に繋がった一例を挙げます。
  •  機械的歯面清掃処置68点ですが、以前はP病名のときだけ算定出来たのが、C病名でも算定可能になりました。そして、妊婦には月1回の算定が可能になりました。算定要件の緩和で増点に繋がります。
  • また、処方料の外来後発薬品使用体制加算(施設基準あり)の算定では処方の度に算定が出来ます。細かな事を言えば相当数ありますが、保険のルールを理解した上で算定することが必要になります。
  •  当会に「レセコンでは算定可としてあるので算定したら、減点された」などのご質問がありますが、レセコンは道具です。算定可、不可は保険のルールを知った先生が判断されることで決してレセコンに頼ってはいけません。
  •  レセコンのソフトが間違っていることはしばしば個人的にも経験があります。逆に、レセコンでは「不可」とされているけれど「これはレセコンが間違い」として算定することもあります。歯科の技術の勉強や研究会参加も重要ですが、レセコン任せにせず、保険のルールの勉強が必要かと特に昨年の改定ではつくづく感じました。

来年10月から、もしかしたら上がるかもしれない消費税10%
政策部解説vol.109 2018.12 

  •  先月号の続きです。消費税の医療機関への影響は大きいです。再度、消費税とは、どういうものかを私的解釈で申し上げますと、「保険での診療報酬に消費税を上乗せ出来ない。だから、仕入れされた医療材料に課せられた消費税は、医療を受けた患者さんには転嫁できない。換言すれば、仕入れに関わる材料(金属、薬、印象材、石こうなど)、技工料金の消費税は医療機関がカブること。」そもそも消費税は、駅伝のタスキ渡しシステムのように、最終消費者が支払うことなのですが、医療にはこの原則が通じません。例外なのです。
  •  消費税非課税は、「売る」(医療の場合は診療行為)場合に消費税を課さない。仕入れの時には消費税を払う。それだけなのです。出るときには消費税を掛けて売れない。仕入れの時に払い転嫁出来ない消費税のことを「損税」といいます。
  •  保団連での主張での「ゼロ税率」とは、仕入れの時には消費税の負担がない。単にそれだけです。社会保険医療が非課税(売る時は、消費税を掛けられない)だから、せめて入る(仕入れ)時の消費税は掛けないで欲しい。そう言っています。
  • さて、2018年6月25日号の「月刊保団連」によると一医療機関の損税は2.31%。ただし、高額な医療機器を購入すると、この数値は上がると思われます。それに、10%の消費税率になれば益々損税は大きくなることは明白です。消費税が5%の時、損税全体では9000億円を超えていると言われていますが、単純計算で10%になれば1兆8000億円を越える損税になります。当然、それは主に国の懐に行くので、国はこれだけの税金をアテにしています。
  •  ところがそれと対照的なのが輸出企業です。輸出還付金制度で輸出企業には消費税分が還付されます。5%の時に3兆円の還付金があったので、これも10%では6兆円になり、消費税が上がれば上がるだけ「儲かる」ことになります。消費税が損税で苦しむ医療機関と消費税で儲ける輸出大企業の現実を思うと、不公平感が感じられます。消費税収が19兆円だった2015年の時を参考にすると、還付金額が6兆円に上り国に入ったのは13兆円ということになります。
  •  先月にもお話しましたが、労働分配率を下げ(所得を下げ)、このように還付金で儲け、法人税実効税率を下げ、そして内部留保を5年間で142兆円も積み増ししたことには矛盾を覚えます。
  •  資本主義経済では所得の再循環がないと成り立たない。この天文的なお金が全てとは言わないまでも半分でも回っていたら消費税など上げなくても8→10%に上げた時に5兆6000円億円の増収があると報道されていますが、内部留保の増額分を考えたら税率を上げるより下げることも出来るはずです。そうすれば、景気は上がります。このままでは増税に苦しむ国民と税制上儲かって笑いが止まらない大企業の構図が益々顕著になります。
  •  当然、身体の具合が悪くても「ガマン、忍耐」する国民が増えます。特に歯科医療は、所得弾力性が医療科目の中で一番高く、受診にブレーキが掛かります。その上、消費税の損税をまともにカブり社会的インフラである歯科医院の経営には大きな影響を与えることは明白です。
  •  まず、消費税10%は阻止しなくてはなりません。20年ほど前の橋本政権は、消費税を3⇒5%に実施したことで参議院選挙に大敗し首相退陣に追い込まれました。来年の7月に参議議員選挙があります。さて、消費税がどう投票に影響するのでしょうか。

都合のいい数字を出して捏造された統計
政策部解説vol.108 2018.11 

  •  「経済が良くなったから2019年10月から消費税を10%に増税出来る環境になった。」との麻生財務大臣がこの夏に語ったことを鮮明に覚えています。しかし、そうなのでしょうか。計算方法の上方操作へのカラクリを東京新聞や西日本新聞で論じられていましたので紹介します。
  • GDPについて
  •  日本のGDPは2015年までは500兆円くらいで推移していました。しかし、2016年12月にこのGDPの算出する計算方法を研究開発投資の項や様々なデータの入れ替えを行ったことで2015年度の数値は31.6兆円増え532兆円になりました。それ(2016年度)以降のGDPはこの計算法で行われてしまい2017年度は546兆円という数字になってしまいました。所謂、企業で言うなら粉飾決済をしたことになります。2015年の9月に安倍首相がGDPを「2020年頃までに600兆円」と言うことが反映されています。
  • 勤労者所得について
  •  「毎月勤労統計調査」からの厚労省が全国約3万3千の事業所から賃金などのデータから所得関連統計を出していますが、今年1月から作成手法を変更し、対象事業者の約半分を変えました。その結果1月から6月までの「現金給与総額」の伸び率は、いきなり大きな数字となってしまいました。特に6月は3.3%という数字になり、1997年以来21年5ヶ月以来の大幅な伸びでした。しかし、調査対象とならなかった半数強の事業者からの数値では先ほどの数値に大きく及ばない結果。
  •  この2つの結果だけでも分かるように、データの改竄で景気がいいことを強調しているに過ぎないと強く感じてしまいます。大企業の内部留保について、ご存知の方も多いと思います。2012年は304兆円で、毎年増加し続け、2017年では446兆円となりました。5年間で142兆円の増加です。
  •  企業が儲けることはわたくしも異存はない事ですが、労働分配率(労働者への還元)は、アベノミクスが始まる前の2012年度には72.3%でしたが、毎年低下を続け、2015年度は67.5%になってしまいました。
  •  確かに、企業は儲かっていることが読み取れますが、勤労者の所得はそうではありません。トリクルダウンにはなってなく、利益は川上でストップされています。景気がいい事(企業)と家計(個人)がいいのは訳が違います。もちろん、これらは来年の消費税増税の理由付けのデータにするのでしょう。
  •  医療機関の損税は、国民の生活、医療機関の経営はどうなるのか、次回には数字を上げてお話したいと思います。

始まりました歯初診(施設基準で医療機関の格差付)
政策部解説vol.107 2018.10 

  •  夏の中華料理店の看板にある(冷麺始めました)のようなタイトルですが、10月1日より歯科初診料237点(届出)、226点(未届)。歯科再診料48点(届出)、41点(未届)になりました。
  •  237点や48点の算定が可能になるには、10月1日までに厚生局に「歯初診」の届けを出さなければなりません。まだ、手続きをお済みでない先生方は、お急ぎ下さい。届出用紙は厚生局のウェブサイトからダウンロード出来ます。滅菌器の番号など所定の事項を書き込んで厚生局に送ってください(尚、最近通知があり10月10日までに厚生局に提出し受理されれば10月1日に遡り算定可能です)。そして、来年3月31日までに院内感染防止対策の研修会を受講し、その受講証を厚生局に提出、受理されることが必須条件です。受講証の有効期限は4年ですから、4年経過するまでに再度受講し、届出することになっています。何だか運転免許証のようですが、個人的には「絶えず勉強し研鑽するように」と解釈しています。
  •  さて、今次改定では、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)及び在宅療養支援歯科診療所(歯援診)の算定基準のハードルが上がりました。設備に対する基準に加えて、実績や日常の地域医療への関わりや取り組みが加わりました。詳細は「歯科点数表の解釈」(通称:青本)をご参照下さい。
  •  ここで届出猶予期間がありますが、今次改定前に「か強診」「歯援診」の施設基準を届出済みの医療機関では、2020年3月31日までとなっています。因みに、歯援診は1と2になりましたが、1の方がよりハードルが高く、経過措置として2020年3月31日までは歯援診2の施設基準を満たすものになっています。
  •  このように、施設基準の算定条件に合致するには、「設備」「実績」「地域の関わり」「歯科医師のポジション」など大きく関わってきます。雑駁に言えば、大きな診療所で、いろいろなポジションにいる所は算定可能、小規模な診療所は算定出来ない構図が浮き彫りになってきました。
  •  また、同じ処置を行っても施設基準の有無や違いで算定点数に差があります。窓口負担も大きくなり算定するのに躊躇してしまう、という声もあります。歯科の中だけで論じるより、患者、国民が納得出来る施設基準が求められると思っています。

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