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●2025年2月13日第16回九州厚生局との懇談 質疑応答
2025年2月13日(木)に行われた九州厚生局(以下「厚生局」)と保団連九州ブロック協議会(以下「九州ブロック」)との懇談会における、九州ブロックの質問・要望への厚生局の回答をまとめた。この記事の内容は、厚生局の確認を得ている。
<事前質問>
1.医療機関のメールアドレスの把握
【九州ブロック】
個別指導の対象患者の通知に関して、令和5(2023)年4月の「医療指導監査業務等実施要領(指導編)」では「FAXまたは電子メールで保険医療機関に通知する」から「電子メール等で保険医療機関に通知する」と変更されました。当該メールアドレスはどのように把握するのですか。
【厚生局】
現在、基本的にFAXで通知しています。医療機関から希望があった場合には、メールアドレスを確認のうえメールで通知しています。何らかの形で元々登録しているメールアドレスを使用して、メールで通知することはありません。将来的にはメールでの通知も検討していくと思います。
2.診療報酬改定等の時期の指導
【九州ブロック】
診療報酬改定や患者窓口負担割合等が変更される時期に個別指導は行わないでください。診療と同時に、レセコンの改修や新しい帳票類の整備等で、医療現場は多忙を極めています。指導現場だけでなく準備期間にも、指導大綱に示されているように懇切丁寧な対応を求めます。
【厚生局】
指導日程は、各県事務所が立会人の先生方と調整しながら、年間を通して作成していますので、個別に回答するのは難しいです。指導時期の配慮も含めて、今後とも懇切丁寧な指導を行うよう、各県事務所に指導していきます。
3.指導時の診療録の記載への指摘
【九州ブロック】
個別指導の指摘事項等に「不適切な例が認められたので改めること」として「~の要点(指導・管理内容の要点)について診療録への記載が不十分である」との指摘が挙がっていますが、記載内容の十分・不十分の判断に明確な基準は設けられているのですか。
【厚生局】
それぞれの指導料・管理料について、対象患者の病状や指導等を行うべき内容は様々ですので、一定の基準を設けるのは難しいと考えています。患者から情報提供があった場合にはカルテにより診療内容を確認する必要があります。カルテ記載は先生自身を守るものだと考えますので、実際に行った診療内容については十分な記載をお願いします。
4.マイナ保険証の取扱い
【九州ブロック】
政府は、マイナ保険証の利用を推進していますが、①発熱患者への対応等で院内の動線を分けているため、1台しかないカードリーダーが使えない場合、②「看取り」「意識がない」等の理由で、患者が自らの意思で資格確認できない場合、個人情報保護の観点も含めて、どう対応すべきですか。
【厚生局】
①については、モバイル端末等を用いたオンライン資格確認が可能な「マイナ在宅受付WEB」の活用を検討していただければと思います。②については、看取りの患者には「目視確認モード」での対応をお願いします。「意識がない」など、生命や身体の危機があり、同意確認が困難な場合には、本人の同意不要でオンライン資格確認ができます。
【九州ブロック】
2024年12月2日の健康保険証の新規発行停止により、資格確認方法が多様で複雑になって、患者も医療機関の事務担当者も混乱しています。患者トラブルにもなりかねません。今後、資格確認の簡略化をお願いします。
【厚生局】
厚労省には、マイナ保険証に関して、お伺いした状況とともに、国民の皆さんに向けて簡便な利用方法についての広報をさらに徹底するように伝えていきます。
5.令和4(2022)年度に集団的個別指導を受けた医療機関への高点数個別指導、今後の高点数個別指導
【九州ブロック】
高点数個別指導について「令和5(2023)年度の新型コロナ感染症の影響を考慮し、令和6(2024)年度は、対象医療機関を選定の上、実施に当たっては、令和元(2019)年度に集団的個別指導を実施し、かつ令和3(2021)年度に高点数個別指導の対象となっていた医療機関を実施対象とする」とされています。
令和4(2022)年度に集団的個別指導を受けた医療機関への高点数個別指導は対象医療機関が選定のみされていますが、令和7(2025)年度以降の取扱いをご教示ください。
高点数個別指導の対象医療機関数は、毎年それほど変動しないと考えられますが、今年のような取扱いが続くとすれば、今後、選定される医療機関は1年度ずつ後ろ倒しのままとなるのですか。
【厚生局】
令和7年1月27日付の厚労省通知「令和7年度における高点数を理由とする個別指導について」の通り、令和5年度に集団的個別指導の対象となった医療機関かつ令和6年度も高点数で上位4%に該当した医療機関と、令和元年度の上位8%の医療機関を突合して該当する医療機関に個別指導を行う予定です。コロナ禍の影響で高点数になった医療機関に配慮し、コロナ禍の前から高点数である医療機関を対象とした形です。
また、今後の選定も指導大綱通りであることに変わりはなく、昨年度に高点数で個別指導の対象に選定されていた医療機関への指導が未実施でも、選定された医療機関を翌年度の個別指導の対象に持ち越すことはありません。
6.「マイナ保険証でしか受付しない」、法令違反の対応には厳正な指導を
【九州ブロック】
患者が薬局から「マイナ保険証でしか受付しない」と言われ、健康保険証での調剤を求めたところ、「なぜマイナ保険証を作らないのですか?説明してください」と詰問された事例がありました。背景には、政府によるマイナ保険証利用の推進があると考えます。
保険薬局は、基本的には処方箋だけで調剤できます。薬局が「マイナ保険証でしか受付しない」と強要するのは法令違反ですので、厳正な指導をお願いします。
【厚生局】
健康保険証の新規発行は停止されましたが、現行の健康保険証は、最長1年間、有効期限内は使用できますので、ご指摘の事例は不適切であると考えられます。今回の事例に限らず、保険医療機関及び保険医療養担当規則、保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則への違反が疑われる情報提供があれば、必要に応じて指導を行いますので、ご協力をお願いします。
【九州ブロック】
患者からは「マイナカードを作るために自治体の役所に行ったら、担当職員から『保険証も紐づけしないと意味がないですよ』と強く言われて、登録したくないのに、マイナ保険証の登録をしてしまった」という声も寄せられています。
7.集団的個別指導の開催時間の後ろ倒しとe-ラーニングでの指導
【九州ブロック】
集団的個別指導が、平日昼間のほか、平日夜間に開催されている県があり、開催時間帯は標準化されていません。集団的個別指導は各地区の中心部で開催されますので、離島や中山間地域からの移動は保険医の負担になっています。余裕を持った開始時間、eラーニングによる指導を行うことを求めます。
【厚生局】
集団的個別指導の開催時間等は、各県事務所が、交通事情等を考慮して決定しています。また、e-ラーニングでの指導は、当局単独で実施できませんので、厚労省が判断することになると思われます。ご要望があったことは厚労省にお伝えします。
<要望事項>
1.高点数による指導
【九州ブロック】
医療機関によっては、診療形態等により、繰り返し集団的個別指導や個別指導の対象とされ、大きな負担になっています。請求内容に問題がない医療機関を個別指導の対象に選定する必要はないと考えます。高点数の医療機関が一律に選定される基準を指導大綱から削除するよう、厚労省にお伝えください。
【厚生局】
高点数に代わる選定基準が見つからないのが実状ですが、ご要望として厚労省にお伝えします。
【九州ブロック】
高点数による個別指導は停止していただき、情報提供等の場合にのみ、個別指導を実施していただければと思います。
2.個別指導の対象カルテは30人分全てを1週間前に通知すること
【九州ブロック】
個別指導対象カルテの指定については「指導日の1週間前に20人分、指導日の前日に10人分を通知する」とされ、従前の取扱いよりは改善されました。しかし、依然として前日に10人分の準備が必要であり、準備期間が極端に短く、今なお医療機関の負担は大きいです。厚労省への働きかけをお願いします。
【厚生局】
ご要望として承り、厚労省にお伝えします。
【九州ブロック】
指導医療官がきちんと指導時間内に閲覧できるように、領収書を含めた持参物の全てを精査しながら準備しますので、医療機関は大変です。保団連からは厚労省に要望しています。前向きにご検討ください。
3.院外処方と院内処方の格差を調整する「補正点数」
【九州ブロック】
2019年の貴局との懇談で補正点数の開示を要望した際、「補正後の点数のデータが厚労省から送られてくるため、補正点数表を作る必要がない」との回答がありましたが、厚労省から補正点数表を取り寄せることはできないのですか。他の一部の厚生局は補正点数表を開示していますので、貴局も開示していただけないでしょうか。
【厚生局】
医療機関の開設者・管理者から電話で問い合わせがあれば、集団的個別指導や個別指導の対象選定に使用した補正後の点数を回答しています。また、他の厚生局が電話で補正点数を回答しているということは把握しておりません。現在のところ補正点数表の全てを開示することは難しいと考えています。
4.「個別指導実施状況」、黒塗りせずに開示を
【九州ブロック】
私たちが請求して開示された資料「個別指導実施状況」の「指導件数内訳等」「計画件数内訳等」が一部の県で黒塗りされているため、選定理由別に選定機関数・実施機関数を把握することができません。各県で統一した対応となるよう、黒塗りせずに開示してください。
【厚生局】
県によって対応を変えているわけではなく、一律の基準で黒塗りしています。情報提供のみが対象となっている県では、表の全てを黒塗りにしないと、数値から選定理由が判明してしまいますので、ご理解いただければと思います。
5.診療報酬改定後は、新ルールに基づく指導を行い、今後の診療に活かせる指導計画の策定を
【九州ブロック】
2024年度の診療報酬改定は6月に実施され、12月までに行われた個別指導は、ほぼ旧ルールの診療に基づいて実施されたものと思われます。算定要件が大幅に変更された今回の改定では、旧ルールで指導が行われても、今後の診療に活かせない面が多いと考えます。改定後は、新ルールに基づく指導を行い、今後の診療に活かせる指導計画を策定することを要請します。
【厚生局】
改定後の指導は、新ルールで実施することが望ましいのは承知していますが、年間を通して指導計画を策定し実施しなければならないため、一定期間については旧ルールの診療報酬明細書を使用することになります。なお、個別指導自体は、保険診療が適切に行われているか、診療内容が適切にカルテに記載されているかという観点で、診療報酬請求について周知徹底するのが目的です。旧ルールにおいても、面談方式で指導を受ける先生とともに、記載や請求の内容を確認することで、指導の目的は達成されていると考えています。
【九州ブロック】
旧ルールで指摘しなければならないため、指導医療官が混乱することもあるのではないかと思います。診療報酬改定の時期は、指導する側も指導を受ける側も非常に慎重に対応しなければならないと考えますので、ご配慮をお願いします。
6.新規個別指導を受けた医療機関が翌年度・翌々年度に集団的個別指導の対象とならないように
【九州ブロック】
新規個別指導を受けた医療機関が、翌年度または翌々年度に集団的個別指導の対象に選定されるケースがあります。新規個別指導は、実質的には個別指導の一種ですので、翌年度・翌々年度は集団的個別指導の対象とならないように要望します。
【厚生局】
集団的個別指導の取扱いは変更されていませんので、ご理解いただければと思います。
7.長期収載品の選定療養化で、患者負担総額が薬価を超える矛盾の解消を
【九州ブロック】
長期収載品(後発医薬品がある先発医薬品)の選定療養化により、薬価が低い長期収載品では患者負担が10 割を超える事例が見られます。薬価が極端に低い場合は選定療養の対象から外すなど、矛盾を解消する対応を求めます。
【厚生局】
極端な例として受け止めました。保険外併用療養費は患者の選択によるものですので、こうした例があることを説明していただければ、患者は選択しないのではないかと思います。ただ、このような矛盾があるということは理解いたしました。
【九州ブロック】
制度的な矛盾があることを厚労省にお伝えください。
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